身長153cm細身な女、メンズスーツをオーダーするの巻

忘れないうちになんとやら。

そもそも昔からスーツに異常なほどの憧れを持っていた。それはスーツ萌えみたいな話というよりは、自分が着たいものとして、である。
しかし営業マンになって急いで用意した安価なレディーススーツは、くびれが綺麗に出るようになっており、袖は長く、丈は短く、それはそれでいいんだけど、着たかったスーツはこれじゃないなとしょぼくれていた(とはいえ、自分の体型で着れて何枚も買えるような手に届く価格のものとなると、そういったものしかないのである)。

それから早6年、今回、もちろん施主たる祖母には了承を得た上で、身内だけの法事を前に、「私が着たいスーツを着る」という宿題を片付けることにした。そして出来上がったのが冒頭のスーツである。いや、なんか、あんまり女性が、それも小さくて細い感じの人間がメンズスーツを作った事例が落ちているのを見かけなかったので、残しておこうと思う。

前提として考えていたこと

そもそもオーダースーツという選択肢を認識していたのは、他人がオーダースーツを作るところに同行させてもらった(挙句、生地などを選ばせてもらった)ことがあるからで、そのときほど私はスーツが好きだと公言しまくっていてよかったなと思ったことはなかったのだが、それによってこの選択肢がすぐに思いついたので今となってもありがたい話である。
同行した先は麻布テーラーだったので、まずは麻布テーラーを調べていたところ、そもそも女性がメンズスーツを作る以前の話として、レディーススーツでさえ、銀座の1店舗しか対応していないようだった。銀座まで行くのは面倒だなと思った私は、とりあえず渋谷周辺で性別問わずオーダースーツを作れるところを探した。

とりあえず突撃してみる

そして、行ったのがHANABISHI 渋谷店だ。ここはレディーススーツも取り扱っているため、女性がスーツを作ることそのものに関しては問題ないと判断した。ただし、どこかに書いてあったが男性スタッフしかいないようなので、気になる人は女性スタッフがいるところを探すといいんじゃないかと思う。私はまぁどっちでもいいなと思ったので、とりあえず予約した上で突撃してみた。

「あのー、レディースではなくメンズの型でスーツを作りたいのですが……可能でしょうか……」

こんな具合だ。もっと驚かれるか困られるかするかと思いきや、たぶん大丈夫でしょう!という回答を得たことにこちらが驚いた。むしろ初めてのパターンでお店の方も楽しんでいただいたようで、心地のいい時間だった。
たぶん大丈夫の「たぶん」というのは、オーダーメイドとはいえ型があり、その最小の型でも大幅に大きい場合は作れないという、性別ではなく体型の壁があるためだったが、身長153cmの自分が最小の型で調整可能範囲内だったので、意外と型が広く用意されていることにも驚いた。

どんなスーツを作るか

HANABISHIのメンズスーツの型には、①ブリティッシュ ②イタリアン ③インターナショナルと3パターンがある。私はどちらかといえば英国紳士みたいなのが好きなので、ブリティッシュにしたかったというのが本音ではあるが、骨格が華奢な人間がそれを着るとガンダムみたいになってしまうことが分かったので、ちょっぴり妥協してイタリアンの型で作ってもらうことになった。

生地はそのへんに大きく並んでいるのもあるが、納得いかない顔をしていたら、生地がファイリングされている本みたいなものを見せてもらうことになった。納得いかない顔してないで、他にもあるか確認すべきだったなと反省しつつ、ここには無限の(無限ではない)選択肢があって、悩む時間はそれはそれは楽しく幸せな時間だった。

裏地やボタンや細かいディテールなどを詰めたのち、採寸に移る。
ディテールを決める際も、「こっちのほうがメンズスーツっぽい」みたいなアドバイスをいただけたので、かなり満足して決められた。そうそう、メンズスーツを作りに来たのでね。

採寸

このときは夏の終わりだったので、Tシャツの中にキャミソールしか着ておらず、Tシャツのまま採寸をお願いすることになったが、もし万が一この記事を読んでメンズスーツを作る人がいれば、体型にあったジャストフィットのTシャツを着ていくことを全力で勧めたい。何も考えずにダボダボのメンズXLなTシャツを着ていき、「この下、何も着てないですか……?」などとお店の人を困らせてはいけない。

丈を長めにした以外は、おおよそメンズスーツの標準らしい形になるように採寸を進めてもらった。丈についてはこだわりがありすぎて、「もうちょっと短くしてもいいですか?」『ちょっとだけなら』「メンズスーツの標準でももう少し短いですけど」『や、長めで』「古い英国紳士みたいなイメージなのかな」『そうそう』みたいな攻防があったことも併せて付記しておく。いいぞいいぞ、オーダースーツ楽しい。

完成からの受け取り

1ヶ月と3週間弱で出来上がったスーツを見て、思わずお店の人とハイタッチをしてしまった。
お店の人にとっても初めてのケースではあったようだけど、壁を感じずにさらりと受け入れていただいたのには正直驚いたし、しっかり要望を汲み取って反映させてもらえたので、いいお値段したけれど物もそうだし体験としても非常に満足している。

ちなみに靴は作れない

スーツと同じくベースとなる型があるそうだが、その最小値が24.5cm(記憶が怪しい)だと聞いた。私は22.5〜23.0cmの靴を履いているので難しいが、24.5cmの靴を履いているのであれば、女性でも同じように靴が作れるかもしれない。どっちにしても渋谷では取り扱っておらず、靴を作りたければやはり銀座にいかなければならないようだけど。

代替案として別の場所でメンズパターンの22.5cmのオーダーシューズを作ったのだが、そこでは「女性だったら」「女性だと」を連呼されまくったので(そこから外れるためにわざわざオーダーシューズを作りに行ってるんだぞ)、結果としていいものはできたのだけど、体験としておすすめしにくく、店名は出さずに残しておく。

©︎moemarusan